スポーツ写真の撮り方に関する質問をツイッターで募集し、スポーツカメラマンの兼子愼一郎さんに話を聞きました。
構成=大西 徹
――ピントを合わせるときはどんなことに気を付ければいいでしょうか?
「どれくらいアップで選手を撮るかにもよりますけど、僕らがゴールの斜め後方から撮るのと、皆さんが客席から撮るのとでは、選手が10m動いたときの調整が変わってきます。僕らのポジションからだと選手が10m動くとかなりピントが変わってくるけど、客席からだと微調整で済むんですよね。だから、的は小さくなるけど遠くから撮るほうがピントを合わせやすくなります」
――そうなんですね。
「だから、ブレないことを心掛けて冷静に的を射抜けばピントは合うはずです。そこで注意したいのは、僕らは下から撮ってピントが外れると、被写体がボケるのですぐに分かります。でも、客席から撮ってピントが外れても、選手の後ろにある芝に合うから気付きづらいんですよね」
――そういう違いがあるんですね。
「なかなか気付きづらいけど、『そういうふうになりやすい』ということを知っていれば、自分なりに注意する方法を見つけやすくなります。写真を勉強している学生には、『カメラはAF(オートフォーカス)でピントを合わせてくれるけど、間違ったところにピントが合っていても教えてくれない』とよく話しています」
――確かにそうですね。
「だから、撮る方が間違いに気づくためにも、もし視力が悪いのであれば、せめてファインダーに付いている視度調整はしておいたほうがいいですね。そうすれば、ちょっとしたピントのずれに気が付くかもしれないから。ふだん眼鏡をかけている方は視力にちゃんと合った眼鏡に変えるとか、そういうちょっとしたことの積み重ねが大事ですね」
――なるほど。
「あともう一つ。展開を予測しましょう。客席から撮影する場合、下にいる僕らよりも明らかに全体の流れを読みやすいですよね。選手を追い掛けて撮るのではなくて、動きを予測して待ち構えて撮るように心掛けましょう。ピントを合わせる時間が長いほうが精度も上がります」
――ピントを合わせる時間というと?
「被写体に合わせ続ける時間が長ければ長いほどピントの精度は上がります。ぱっと気づいて、あっと思って、なんとか追い掛けて、ピントを合わせて、シャッターを押せたとしても、ピントは甘くなりがちです」
――確かに。
「そうならないようにボールが来る前から選手にピントを合わせておいて、トラップする前から連写すれば、急に構えて追い掛けて撮るよりもピントが合う確率は高くなります。ということで、なるべく展開を予測して待ち構えて撮ってみましょう」■