一眼レフカメラの使い方に関する質問をツイッターで募集し、スポーツカメラマンの兼子愼一郎さんに話を聞きました。
構成=大西 徹
――今回はピントの合わせ方に関する質問がかなり多かったんですが、その前に兼子さんに質問したいことがあります。
「なんでしょう?」
――先日、ファインダーを覗いているときに、自分の体や手元が不安定でカメラが動いていることに気づいたんです。兼子さんはそうならないように何か意識はしていますか?
「被写体が動いているときも止まっているときも、自分が動いたらブレてしまうから、気を付けるようにしています。カメラマンにもよるけど、僕は手ブレ補正の機能をオンにしていますね。どの程度の効果があるかは分からないけど、後からがっかりするよりはいいので」
――そうなんですね。
「以前は手ブレ補正をオンにしてファインダーを覗くと、被写体が『もわーん』と動くのでオフにするカメラマンが多かったんです。最近はそれを防ぐ設定もできるので手ブレ補正はオンにしたほうがいいと思います。だいたいレンズのほうにスイッチがあるんだけど、メーカーはどこですか?」
――Canonです。
「じゃあレンズに『スタビライザー』っていう文字がないですか?」
――ありました。印字されています。
「それをオンにしたほうがいいですね」
――スイッチがないです。
「スイッチがない? そのボディだと画面で設定するのかな。Canonの公式サイトを見れば分かるけど、一つずつ調べていたら時間がなくなりそうですね……。それで思い出しました。試してみたいことやうまくいかないことが出てきたら、説明書の目次を見るといいと思います。その中に意外と発見がありますよ」
――なるほど。
「もともとカメラに詳しい方は別だけど、あまり詳しくなくて説明書をそんなに読んでいない方であれば、かなり効果があると思います。ただ、隅から隅まで読むのはけっこう面倒なので、気になったことや改善したいことが出てきたときに見ると、『こんな機能があったのか』と気づくでしょうね」
――手元に置いておきます。
「あと、皆さんに聞いてみたいことがあるんですよね」
――なんでしょう?
「皆さん、いい写真を撮りたいと思ってこの記事を読んでくださっていると思います」
――そうですね。
「その中でも、いい写真を“手っ取り早く”撮りたいのか、 “時間をかけて”技術を上げていい写真を撮りたいのか、どちらでしょうか」
――といいますと?
「いい写真を撮る“手っ取り早い”方法は、機材をアップグレードすることです。機材を変えるだけで良くなる部分はすごく多いから。すでにそれなりの機材を持っているハイアマチュアの方は少し変わってきますけど。金銭面で少し余裕のある初心者の方も中にはいらっしゃるかもしれないから」
――そうですね。
「今使っている古い機材を同じ価格帯の新しいものにするだけでも写真は変わります。カメラの性能は日々進化しているので、アップグレードすれば手っ取り早く効果を出せるでしょうね。ただ、決して安い買い物ではないので、もし余裕があるなら一つの方法として考えてもいいと思います」
――なるほど。
「そうではなくて、“時間をかけて”技術を磨きたいのであれば、また話は違ってきます。僕が写真を勉強していた若い頃、うまくなりたいならズームレンズは使うなとよく言われました」
――それはスポーツを撮るときですか?
「スポーツに限らず。今でも写真学校ではそう教わると思います。これは写真に限らないことですけど、何かが便利になると、僕らがそれだけ楽をして技術を磨けなくなるんですよね。例えば、計算をするときに電卓を使っていると、暗算の能力はどんどん衰えていきます。でも、電卓を使わなければ、暗算の能力は衰えません。写真も同じで、たとえ機材をアップグレードできなくても、撮る技術を上げることはできると思います」■